尾崎ロザリオの歌
明け方
目が覚めると
友人からスタンプ
が届いていた。
ケータイをかちゃかちゃして
もう少し眠れると
ふたたび目を瞑る。
先日みた夢の中のお話だ。
いよいよ
その時がきた。
私は毎日描きためた
10000枚の絵日記を壁に貼る。
とても静かな場所で。
しーんとする中
誰かが
絵日記を
ビリビリ壁から
引き剥がしていた。
なんでこんなことをするんだと
思ったけど剥がされた部分の壁には
墨で描いた絵のような
文字のようなものが見えた。
何と書いてあるの?
と気になっていたら
突然
丸い形の
楽器のケースを
抱えたその人は
私の腕を掴む。
そして
楽器の黒い入れ物から
黒い煙が出てきて
あれよあれよという間に
その人は
真っ黒な煤けた
墨の塊の化け物に
変身した。
腕を掴まれたまま
早く腕を離してくれないかなと
思っているうちに
なんだか
もしかして
今後 絵日記を
描いていけなく
なるんじゃないかと
いう得体の知れない
不安に包まれる。
なんとかして
やっつけないと
と思い始めた矢先に。
どこからか
赤と白のシャツに
カウボーイハットをかぶった
人が現れ
なんと 化け物への
戦いに挑んでくれた。
救世主が現れたっと
私が喜ぶのは束の間
あっという間に
バキューン。
化け物の
黒い手から
大きな弾が飛ぶ。
赤と白のシャツの
胸の辺りを
バズーカ砲で打ち抜かれた
ように貫通して
向こう側が見えた。
その人は
外国製の買い物カートに乗って
私の前から去る。
去り際
よく見ると
その人の
体は肌ではなく
胸の辺りは金属性の物が捲れて
血は出ておらず
ターミネーターのようで
何か歌っていた。
とっさに
それは
尾崎ロザリオの歌ね
と私は言った。
ポロンぽろん。
こんなのへっちゃらさ。
やってもこんなもんさ。
たらたらたららー。
わかるだろ。けどなんでも
おそれることは
ちっともないのさー。
だいじょうぶぅーゥゥゥ。
なんだろ
この機械的な
台詞のような歌詞。
だがめちゃくちゃ
悲しい音に聞こえた。
目は見開き
半開き気味の
腹話術の人形のような
口元の彼を
私はぽかーんと
見ていた。
自分で言っておきながら
尾崎ロザリオって誰だったっけ?
ふたたび
目が覚め
汗びっしょりで
現実に戻っても
腕をまだ掴まれているように
得体の知れない
絶望的な気持ちを
引きずりながら
ケータイで
尾崎ロザリオに
ついて調べた。
すると
尾崎ロザリオは実在せず
だんだん頭が冴えてきて
すべては夢で。
よかったよかったと
夢から完全に醒める。
ケータイの時計は
10月12日午前6時頃を示す。